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高所適応:チベット人の高所適応についての遺伝的機序

Nature Genetics 46, 9 doi: 10.1038/ng.3067

チベット人は高所でもヘモグロビン濃度が上昇しない。本論文では、プロリルヒドロキシラーゼ2(PHD2)をコードするEGLN1遺伝子の高頻度ミスセンス変異が、高所に適応した反応に関与していることを報告する。すなわち、EGLN1のバリアントc.[12C>G; 380G>C]が、チベット人の高所に適応した機能をもたらしていることを見つけた。低酸素誘導性因子(HIF)は、赤血球産生といった低酸素に対する多くの生理学的応答を調節している。PHD2は、このHIFの分解を引き起こす。PHD2のバリアントp.[Asp4Glu; Cys127Ser]では、酸素に対するKm値が小さくなっており、この変異によって低酸素環境でHIFの分解が促進されることが示唆された。低酸素状態が野生型の赤血球前駆細胞の増殖を促進するのに対し、低酸素培養はc.[12C>G; 380G>C]変異をEGLN1に持つ前駆細胞の増殖を大きく損なっていた。さらに、このc.[12C>G; 380G>C]変異は、高所への適応が判明しているハプロタイプに存在し、およそ8千年前にすでに生じていたことが分かった。c.[12C>G; 380G>C]変異は、低酸素誘導性およびHIF調節性に起こる赤血球形成の促進を無効にしており、チベット人が高所で多血症を発症しないことの分子機序を示すものと考える。

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