細菌の宿主適応：嚢胞性線維症患者に常在する緑膿菌の収斂進化と適応

同一の病原性を示すが遺伝子型が異なる細菌菌株間の宿主内進化については、どのように比較すべきかがほとんど解明されていない。本研究では、34人の嚢胞性線維症の患児および若年患者から縦断的に収集した、474個の緑膿菌Pseudomonas aeruginosa臨床分離株について全ゲノム塩基配列決定を行った。配列解析の結果、36個の緑膿菌系統において、52個の遺伝子の収斂分子進化を同定した。そして、これらの遺伝子が宿主適応において、調節ネットワークおよび主要な代謝経路の再形成、抗生物質耐性獲得、細胞外毒性因子の消失のために果たす役割が示唆された。さらに、鍵となる調節ネットワークに突然変異が規則正しく連続して生じているのを見つけた。結果的に、下流に位置する転写調節因子の突然変異は、上流で起こった調節因子の変異に付随して生じたものであった。このことは調節ネットワークの再形成が適応において重要かもしれない可能性を示唆している。宿主適応に関与している遺伝子の特性解析によって、嚢胞性線維症患者に常在する細菌の進化的変化の予測や将来的な治療介入に役立つと期待される。