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心疾患:遺伝的関連解析から僧帽弁逸脱の原因となる生物学的経路が示唆された
Nature Genetics 47, 10 doi: 10.1038/ng.3383
非症候群性の僧帽弁逸脱(MVP)は一般的な退行性の心臓弁膜症で、僧帽弁逆流、心不全、突然死を引き起こしやすいが、その病因は分かっていない。これまでの家系研究や病態生理学的研究から、複雑な遺伝形式であることが示唆されている。本論文では、MVP症例1,412例および対照2,439例における2つのゲノムワイド関連研究のメタ解析を行った。その結果、6座位が同定された。それらの座位は症例1,422例および対照6,779例において追試され、候補遺伝子の機能的な証拠が得られた。我々は転写因子をコードするLMCD1(LIM and cysteine-rich domains 1)に注目し、そのゼブラフィッシュにおけるオルソログのモルフォリノによるノックダウンを行うと、房室弁逆流が引き起こされた。ゼブラフィッシュにおける同様の表現型は、テンシン1(細胞骨格の組織化に関与するフォーカルアドヒージョンタンパク質)をコードするTNS1のオルソログのノックダウンにより得られた。弁の形態形成過程でテンシン1の発現が見られることも分かり、またTns1−/ −マウスでは僧帽弁後尖の拡大が見られた。この研究は、MVPのリスク座位を初めて明らかにしたものであり、また、最も一般的に僧帽弁の修復が適応になる僧帽弁逆流に関与する新しい機構を示唆している。