Analysis
伸長とBMI:バリアントのインピュテーション(補完)を用いた遺伝的分散の推定により、ヒトの身長とBMIについてこれまでに欠けていたわずかな遺伝率を明らかにする
Nature Genetics 47, 10 doi: 10.1038/ng.3390
全ゲノム配列決定データを用いて、血縁関係のない個人での複雑形質についての遺伝率を見積もる手法、GREML-LDMSを提案する。我々は、全ゲノム配列決定データを使ったシミュレーションを行い、一般的なバリアントとまれなバリアントについて、それぞれ約97%と68%の多様性が見られることをインピュテーション(補完)によって導いた。GREML-LDMS法を用いて、44,126人の血縁関係のない個人から、全部で約1,700万の補完されたバリアントが、身長の分散の56%〔標準誤差(s.e.)=2.3%〕と体格指数(BMI)の分散の27%(s.e.=2.5%)を説明できることが見積もられた。そして身長とBMIに関連するバリアントが自然選択を受けていたという証拠を発見した。補完における不完全なタグ付け、および家系をもとにした既存研究からの遺伝率の過剰な見積りの可能性を考慮した結果、遺伝率は身長については60〜70%、BMIについては30〜40%と考えられる。従ってこれまで欠けていた遺伝率は両方の形質で小さいといえる。また、複雑な形質に関連する遺伝子をさらに発見していくには、SNPアレイを用いた研究の後に補完を行う方法が、現在の全ゲノム塩基配列決定を行うよりも費用効率が良いといえる。