Analysis
エンハンサー配列:エンハンサーの初期確立および調節座位の複雑性は造血系細胞分化の転写プログラムを形作る
Nature Genetics 47, 11 doi: 10.1038/ng.3402
我々は、DNase-seq、ヒストン修飾ChIP-seq、RNA塩基配列決定法を用いて、造血系細胞の分化過程でのエンハンサーの全体像と遺伝子発現動態についての統合解析を行い、分化初期におけるエンハンサーの確立および調節座位の複雑性が、細胞状態の移行の際に遺伝子発現変化を支配する仕組みについてモデル化した。複雑性の高い遺伝子(DNアーゼにより位置決定されるエンハンサーの総数が、造血系細胞系譜全体で非常に多い遺伝子)は、複雑性の低い遺伝子と構造的および機能的に異なっており、より大きな発現変化を達成し、また、細胞種特異的エンハンサーおよび細胞状態移行関連エンハンサーの両方が豊富に存在する。このようなエンハンサーは造血幹細胞および前駆細胞において確立され、1つの分化細胞運命において維持されるが、他の細胞運命では失われる。次に我々は、量的モデルを開発し、活性なエンハンサーのDNA塩基配列中の頻度や細胞系譜歴から、遺伝子発現の変化を正確に予測することに成功した。我々の方法から、B細胞特定化過程で細胞状態の移行ピークにPU.1が担う新しい機構的役割が示唆された。また、エンハンサーの遺伝子への割り当てをする際の修正法としてこの方法を用いうることが分かった。