Analysis
スプライシング変異:イントロン残存はがん抑制因子を不活性化する一般的な機序である
Nature Genetics 47, 11 doi: 10.1038/ng.3414
疾患を引き起こす変異のうちかなりの割合が、スプライシングの異常を原因としている。ゲノムデータの特性解析によってがんの体細胞性一塩基バリアント(SNV)が同定されているが、これらのバリアントのうち異常なスプライシングを引き起こすのはどの程度なのかについては、網羅的な検証は行われていない。本論文では、がん患者1,812人のRNA塩基配列決定およびエキソーム塩基配列決定のデータを解析し、エキソン内に存在して正常なスプライシングを妨げるおよそ900のSNVを同定した。31の同義変異を含む少なくとも163のSNVにおいて、イントロン残存やエキソンスキッピングが対立遺伝子特異的に起こることが明らかになった。こういったSNVの約70%はエキソンの最終塩基に生じていた。注目すべきは、イントロン残存の原因となるSNVが、がん抑制因子に多数存在しており、このようなSNVの97%において中途終止コドンが創出されていることである。そして、生じたナンセンス変異によってがん抑制因子は短縮型となったり、生成されなかったりするため、結果的に機能喪失が起こった。このようなスプライシングの異常が予測されるゲノムの特徴も明らかにすることができた。全体として言えば、今回の結果はイントロン残存が、高い頻度で起こる、がん抑制因子の不活性化を招く機序であることを示すものである。