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白血病:成人T細胞白血病・リンパ腫の統合的分子解析

Nature Genetics 47, 11 doi: 10.1038/ng.3415

成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)は、ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)感染に関連した末梢性T細胞性腫瘍であるが、その遺伝的基盤の多くが不明である。本論文では、計426例のATL症例について、全ゲノム解析・全エキソン解析、トランスクリプトーム解析、標的配列再決定解析に加えて、マイクロアレイによるコピー数解析およびメチル化解析を用いて行った統合的な分子解析研究について報告する。こうして同定された異常が認められた遺伝子は、HTLV-1のTaxタンパク質に関連する遺伝子群と有意に重複しており、特にT細胞受容体-NF-κBシグナル伝達経路、T細胞の遊走に関連する経路、免疫監視、その他を含めて、T細胞の機能に関連する遺伝子群に高頻度に集中していた。また、活性化型変異(PLCG1PRKCBCARD11VAV1IRF4FYNCCR4CCR7)や、融合遺伝子(CTLA4-CD28ICOS-CD28)が高頻度に認められた点も顕著な特徴である。我々は、さらに、IKZF2CARD11TP73などの遺伝子内欠失や、GATA3HNRNPA2B1GPR183CSNK2A1CSNK2BCSNK1A1などの変異も高い頻度で生じていることを見いだした。今回の知見は、T細胞シグナル伝達の鍵分子に関する新たな視点を提供するとともに、この難治性の腫瘍の新しい診断法や治療法の開発に寄与すると期待される。

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