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トウモロコシ糸黒穂病:細胞壁結合型キナーゼがトウモロコシに糸黒穂病の量的抵抗性を与える
Nature Genetics 47, 2 doi: 10.1038/ng.3170
糸黒穂病は、土壌由来の真菌Sporisorium reilianumがトウモロコシの植物体全体に引き起こす病害で、世界のトウモロコシ生産にとって深刻な脅威となっている。糸黒穂病の主要な量的抵抗性座位qHSR1は、トウモロコシ染色体のbin2.09に見いだされている。本論文では、qHSR1のマップベースクローニングの結果、およびqHSR1が介する抵抗性の分子機序を示す。連続的な高密度マッピングおよびトランスジェニック相補法により、ZmWAKがqHSR1内に存在し、トウモロコシ糸黒穂病の量的抵抗性を生じている遺伝子であることを明らかにした。ZmWAKは形質膜に広がっているので、受容体様キナーゼとして作用して細胞外シグナルの認識および伝達を行っている可能性がある。ZmWAKは実生の中胚軸で高発現し、そこで内部に侵入したS. reilianumの活物寄生性の増殖を停止させていた。中胚軸での発現が害されると、ZmWAKによる抵抗性は損なわれた。ZmWAK座位の欠失は栽培化後に生じてトウモロコシ生殖細胞質の間に広がったと考えられ、ZmWAKのキナーゼドメインには、トウモロコシの進化の過程で機能的制約を受けたと考えられる。