がんの細胞系譜：多巣性前立腺がんの遺伝的類縁関係を解析し、腫瘍性および形態学的に正常な前立腺組織に複数の異なるクローン増殖を同定した

ゲノムワイドDNA塩基配列決定を行い、前立腺組織由来の複数試料間の類縁関係を明らかにした。これらの試料は、3名の男性の前立腺から切除した、がん組織、ならびに形態学的に正常な組織から得た異なる部位の試料である。その結果、がん組織から離れた位置にある形態学的には正常な組織に変異が多く発生していることが分かった。これはクローン増殖を反映している。また、形態学的には正常な組織で変異を生じさせている過程はがん組織でも見られた。今回得られた知見は、進行中の異常な変異過程を示すものであり、発がんの背景をなす場の効果と一致する。この過程は、過度に分岐した進化とがんクローンの混合を引き起こすものであり、その結果、例えば1つの腫瘍塊内の異なるERG融合に複数のがん系譜が含まれることになる。変異の一部は、形態学的に正常な組織と腫瘍組織において、もしくはさまざまなERG系譜間で共通していた。これは、クローン増殖が初期もしくは別々に起こったことを示している。今回の研究成果は、多病巣性がんの発生に関する情報を提供し、個々の場合に応じた前立腺がん治療に対して示唆を与えるものである。