Analysis
大腸がん:大腸がんのトランスクリプトームから判明した間質の寄与
Nature Genetics 47, 4 doi: 10.1038/ng.3224
大腸がん(CRC)の転写特性に基づく最近の研究から、予後が不良のSSM型〔幹細胞様/鋸歯状腺腫型/間葉転換型(stem/serrated/mesenchymal型)〕と称されるサブタイプが明らかになった。本論文では、このサブタイプにおいて発現量が増加している遺伝子群が、間質細胞においても著しくよく発現していることに注目した。この知見から、SSMの転写産物が、上皮性がん細胞ではなく間質細胞由来である可能性が示唆された。この仮説を検証するため、患者由来のがん組織の異種移植モデル、すなわちヒトのがん細胞の増殖をマウスの間質が支える系を用いて、CRCの発現データを精査した。生物種に特異的な発現を調べたところ、SSM遺伝子群のmRNA量はその大部分が間質における発現に由来するものだと判明した。さらに、転写シグネチャーから、SSM遺伝子の発現が非常に高いがん間質線維芽細胞(CAF)、白血球、内皮細胞が、ヒトCRCのSSMサブタイプにおいて多く存在することが分かった。高発現というCAFシグネチャーは未治療CRCの場合の予後不良と関連し、高発現という間質の統合シグネチャーは直腸がんの放射線療法に対する抵抗性という予後予測となった。上記の結果は、SSMサブタイプが呈する特徴的な転写上および臨床上の特性が、間質構成細胞がこのサブタイプにおいて特に多量に存在することに帰する可能性を示している。