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転写:転写伸長因子複合体とコヒーシンを機能的に関連させるAFF4の生殖細胞系列での機能獲得変異が発達障害の見られる症候群を引き起こす
Nature Genetics 47, 4 doi: 10.1038/ng.3229
転写伸長は胚発生過程での遺伝子発現調節に重要である。転写伸長因子複合体(super elongation complex:SEC)は、停止したRNAポリメラーゼII(RNAP2)を再活性化することによりこの過程を制御する。本論文では、エキソーム配列解読により、コルネリア・デ・ランゲ症候群(CdLS)と表現型が類似する新しい症候群(CHOPS症候群)の症例3名について、SECの主要構成要素であるAFF4にミスセンス変異を発見したので報告する〔CHOPSのCは発達遅滞(cognitive impairment)および粗い顔貌(coarse facies)、Hは心奇形(heart defects)、Oは肥満(obesity)、Pは肺の異常(pulmonary involvement)、Sは低身長(short stature)および骨形成異常(skeletal dysplasia)を意味する〕。トランスクリプトーム解析やゲノムワイドのクロマチン免疫沈降(ChIP-seq)解析から、CdLSおよびCHOPS症候群では、AFF4、コヒーシン、RNAP2の結合に同様の変化が認められた。さらにSEC、コヒーシン、伸長型のRNAP2の間には、直接の分子的相互作用があることも示された。これらのデータは、CHOPS症候群とCdLSの発症機序には、AFF4およびコヒーシンのゲノムワイドな結合の変動に起因する転写伸長反応の異常という共通の分子機構が存在することを意味している。