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アイスランド人ゲノム:ヒトY染色体の点変異率

Nature Genetics 47, 5 doi: 10.1038/ng.3171

突然変異は生物多様性を生みだす根本的な原因であり、変異の発生速度(変異率)は、進化や医学研究での重要なパラメーターである。本論文では、753人のアイスランド人男性由来の全ゲノム配列データを274の父系グループに分け、1,365回の減数分裂(47,123年)をもとに、Y染色体上の男性特異的領域(MSY)21.3 Mbにおける点変異の発生速度を推定した。X縮重型(X-degenerate : XDG)配列、X転位型(X-transposed : XTR)配列、パリンドローム配列を除外したアンプリコン型(rAMP)配列を合わせた15.2 Mbの変異率は、1塩基対1年あたり(PPPY)、8.71 × 10−10であった。6.1 Mbのパリンドローム(PAL)由来の配列の場合には、これより低い変異率、7.37 × 10−10 PPPYが検出された(P=0.04)。この値は、 父方から受け継いだ常染色体の変異率である7.2 × 10−10 PPPYと統計的に差がなかった。今回判明した PAL配列とその他のMSY領域とに認められる変異率の違いは、発生期の常染色体やPALに生じたde novo変異が遺伝子変換を介して修復される速度の指標になるのではないかと推測する。

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