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インプリンティング:ヒトおよびマウスの組織特異的なゲノムインプリンティングのマップに現れた遺伝的コンフリクト
Nature Genetics 47, 5 doi: 10.1038/ng.3274
ゲノムインプリンティングはエピジェネティックな過程の1つで、遺伝子発現が母方もしくは父方から受け継がれた対立遺伝子でのみ起こるように制限される。このような機構が進化上どのように作り出されたかについては多くの学説が提唱されているが、生物種を問わず、インプリンティングの規模や動態を明確に示すデータが不足しており、完全な理解には至っていない。今回、マウスでは33種類、ヒトでは45種類に及ぶ、さまざまな発生段階や組織におけるインプリンティングの状態を示すマップを作成した。その結果、インプリンティングを受ける遺伝子のほとんどの全てが発生初期にインプリンティングされること、そして、母方か父方かという由来による発現様式を成体で持続的にとる場合と、完全に失われる場合があることが分かった。さらに、進化シグネチャーの1つである母方父方間コンフリクト(競合)と矛盾しない、下記の知見が得られた。まず、インプリンティング遺伝子は、母方と父方特異的に発現する対立遺伝子が共発現するペアに多く見つかった。加えて、インプリンティング遺伝子の発現促進パターンが、ヒトとマウスでは大きく異なっていること、さらにインプリンティングが起こらない他の生物種のオーソログの発現よりもヒトとマウスにおいて高発現であることが示された。今回報告した研究方法は、あらゆる生物種でのインプリンティング検出のための標準的なフレームワークを示すものであり、哺乳類におけるゲノムインプリンティングの原因と結果の解明に有用である。