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前立腺がん:限局性多病巣性前立腺がんにおける病巣間のゲノム多様性
Nature Genetics 47, 7 doi: 10.1038/ng.3315
本論文では、臨床的には限局性の、複数の病巣が存在する前立腺がんにおける病巣間での分子レベルの多様性について詳細な解析を行い、新たな腫瘍形成遺伝子もしくは腫瘍抑制遺伝子を見いだした。まず、患者74人の、 グリーソンスコアが7の指標腫瘍(index tumor:最大サイズの病巣)におけるコピー数異常(CNA)を調べた。そのうち5人の患者の、診断生検で入手可能な範囲のDNA量に対して全エキソーム塩基配列解読を行い、 ゲノム特性解析によって、前立腺内で離れた部位にある病巣のゲノム多様性を調べた。生検に際しては、23の異なる腫瘍病巣別に精密な試料採取を実行した。腫瘍の複数の病巣には高度な多様性が見られ、一塩基バリアント(SNV)、CNA、ゲノム再編成に病巣間で大きな差異があった。今回、 MYCLの増幅が高頻度で起こっていることを新たに見いだし、確認した。ここで、この増幅と同時に、TP53の欠失と、ユニークな特性を示すDNA損傷および転写調節異常が生じていた。さらに、病巣が複数あるがんの進化過程が多岐にわたり、時には、クローン起源が別々の腫瘍もあることを明らかにした。上記の結果は、前立腺内のゲノム多様性と予想される臨床転帰との特定の関連性を示した最初のものであり、個々の患者の予後を示すこれまでにないバイオマーカーの開発情報を与えるものである。