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食道がん:バレット食道および食道腺がんのペアに対するエキソーム解析

Nature Genetics 47, 9 doi: 10.1038/ng.3343

バレット食道は、CDKN2Aの欠損と、その後のTP53の不活性化や異数性という段階的な進行を経て、食道腺がん(EAC)になると考えられている。本論文では、EACとバレット食道の25組の検体と、バレット食道とEACから広範囲にわたって採取した患者5人の検体の、全エキソーム塩基配列解読について報告する。今回の解析によって、がん遺伝子の増幅は通常遅い段階で起こる事象であること、そしてTP53の変異は多くの場合、異形成が見られない粘膜においても、バレット食道進行の早い段階で起こることが明らかになった。これとは別のエキソームの塩基配列データを再度解析したところ、EACの大半(62.5%)はゲノム倍化後に出現すること、そしてEACゲノムのゲノム倍化によるゲノム変化は、遺伝子によって異なる傾向を示すことが分かった。すなわち、がん遺伝子の増幅は発生頻度が高く、CDKN2Aなどのがん抑制遺伝子の増幅は発生頻度が低かった。上記のデータはEACが、がん抑制遺伝子に生じた変化が徐々に蓄積していくことが原因ではなく、むしろ、さらに直接的な、TP53変異細胞がゲノム倍加を経る過程によって発生し、その後発がん遺伝子の増幅が起こることを示唆するものである。

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