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食道がん:全ゲノム塩基配列解読から得られた、バレット食道および食道腺がんのクローン構成についての新たな手掛かり
Nature Genetics 47, 9 doi: 10.1038/ng.3357
食道腺がん(EAC)とその前がん状態であるバレット食道については、分子レベルの遺伝的関連がほとんど解明されていない。今回、23人の患者から切除したバレット食道とEACの検体ペアに対する全ゲノム塩基配列解読、そして同時に、1人のバレット食道患者の食道全域からもれなく採取した検体について、経時的かつ詳細な症例研究を行ったところ、以下に述べる新たな知見が得られた。すなわち、(i)バレット食道においては複数の異なる変異クローンが存在し、異形成が観察されない場合であっても高度に変異していた。(ii)バレット食道からEACになると、コピー数の増加が見られたが、各種変異クローンが混在している状況には変化がなかった。このとき、EACとEACに隣接したバレット食道とでは、驚くほど少ししか変異が重複しなかった。(iii)特定のコード領域に生じた変異には違いがあるにもかかわらず、変異の全体像はこれらの2つの病態に共通した要因の存在を示唆した。臨床的な観点からすると、 異形成の病理組織学的評価は、バレット食道上皮で起こっている分子レベルの多様性を十分に反映していないと考えられるが、Cytospongeの技術によって、検体採取によるバイアスを克服することが可能で、変異クローンの全体構成を明らかにできる。