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食道扁平上皮がん:食道扁平上皮がんにおける、空間的な腫瘍内不均一性と時間的なクローン進化の過程
Nature Genetics 48, 12 doi: 10.1038/ng.3683
食道扁平上皮がん(ESCC)は、最もよく見られる悪性腫瘍の1つである。しかし、ESCCにおける、空間的な視点からの腫瘍内不均一性(ITH)や、時間的な視点からのクローン進化の過程については、ほとんど解明されていない。この課題に取り組むため、ESCC患者13人から得た51の腫瘍領域に対する複数領域全エキソーム配列決定と、この13人のうちの3人に対する複数領域のグローバルメチル化プロファイリングを行った。まず、体細胞変異の平均35.8%がITHを示すことが判明した。また、腫瘍ゲノムの系統樹の枝部分に位置づけられたドライバー変異の半分はがん遺伝子を標的にしており、これらのがん遺伝子には、PIK3CA、NFE2L2、MTORが含まれていた。一方、系統樹の幹に当たるところに位置するクローン性ドライバー変異の大部分はがん抑制遺伝子に起こり、それらにはTP53、KMT2D、ZNF750が含まれていた。興味深いことに、エピゲノム解析をもとに作成した系統樹(phyloepigenetic tree)はゲノム解析による系統樹(phylogenetic tree)の樹形を厳密に再現していた。このことは、遺伝的な変化とエピジェネティックな変化が関連している可能性を示唆している。空間的なITHとクローン進化の過程に対する今回の包括的な検証は、ESCCにおける腫瘍形成とプログレッションについての理解を深めるための、分子レベルでの重要な根拠をもたらすものである。