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尿路上皮がん:化学療法抵抗性尿路上皮がんのクローン進化の過程

Nature Genetics 48, 12 doi: 10.1038/ng.3692

化学療法に抵抗性を示す尿路上皮がんに対して、一律に奏効する根治療法は存在しない。化学療法に由来する選択圧によって、どのように尿路上皮がんが進化し、クローン構造が形成されていくかを解明することは、臨床的に意味のある重要な生物学の課題である。この課題に取り組むために、72の尿路上皮がん試料を対象とした全エキソーム塩基配列決定およびクローン分析を行った。この試料には、化学療法実施前および実施後にあらかじめ収集した原発腫瘍および進行した腫瘍の対応する試料16組が含まれる。その結果、以下の、いくつかの手掛かりが明らかになった。(i)化学療法を受けた尿路上皮がんで見つかる変異は、患者内で不均一性を示すという特徴があり、変異の大多数は共通でない。(ii)分枝型進化(branching evolution)や遠隔転移の広がりは、尿路上皮がんの自然な経過のうち、極めて初期に起こる。(iii)化学療法後の尿路上皮がんには、L1細胞接着分子(L1CAM)およびインテグリンのシグナル伝達に関係するクローン性変異が多く認められる。(iv)化学療法後の尿路上皮がんでは、APOBECによって導入され、クローン性を示す変異が多数見つかる。そしてこのような変異の導入によって尿路上皮がんは、その寿命の限り、進化を継続する。

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