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ウマの毛色:ウマのカモフラージュ毛色であるDun(ダン)の原因となる毛色素の非対称な沈着はTBX3の調節変異によって障害される
Nature Genetics 48, 2 doi: 10.1038/ng.3475
Dun(ダン)はウマの野生型毛色の1つである。Dunは明るい色の体毛で、部分的に、原始型マーキングと呼ばれるこげ茶色の目立った領域が存在する。本論文では、Dunの明るい色の毛色が、成長途上の毛において色素沈着が毛包の軸を中心に対称的に起こらないために引き起こされることを明らかにした。そして、このような色素沈着の偏りは、毛胞内でのT-box 3(TBX3)転写因子の発現が局在化して、それがメラニン産生細胞の分布を決定することによりもたらされることが分かった。一方、家畜のウマの大部分はDunではなく、色素がもっと高度に沈着した毛色を持つが、それは、調節変異によりTBX3の毛胞内での発現が障害され、結果的に、個々の毛でメラニン産生細胞および色素顆粒の一様な分布がもたらされることに起因している。今回、Dun以外の色を生じさせる2つの対立遺伝子(non-dun1、non-dun2)を同定した。non-dun2は最近になって出現した対立遺伝子であるのに対し、non-dun1は古代のウマのDNAに存在するので、この多型がウマの家畜化以前から存在していたことを示している。今回得られた結果は、発生におけるT-box遺伝子の新たな役割を示し、また、毛包の生物学および色素沈着についての新たな知見を示すものである。