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DNAメチル化:B細胞成熟過程でのDNAメチル化動態が慢性リンパ性白血病での一連の疾患表現型の基礎となる
Nature Genetics 48, 3 doi: 10.1038/ng.3488
腫瘍と正常組織の違いを図示することは、がん研究の中心である。しかし、複雑な正常組織構造に起こった腫瘍のクローン性増殖では、エピジェネティックなパターンの違いといった、がん特異的な事象が隠れてしまう可能性がある。我々は、正常なB細胞サブセットの全ゲノムバイサルファイト塩基配列決定により、B細胞の成熟度と一致した、転写因子結合部位選択的な広範囲にわたるエピジェネティックプログラムの実行を観察した。慢性リンパ性白血病(CLL)の患者268例の悪性B細胞と正常B細胞の比較により、腫瘍は、正常な発達段階を反映した一連の成熟状態から主に生じていることが分かった。CLLでのエピジェネティックな成熟は不活性型の遺伝子発現パターンと良好な臨床転帰の増加に関連していた。さらに、これまでに報告された腫瘍特異的メチル化事象の多くは、通常、非悪性B細胞に見られることが分かった。同時に、CLLにおける転写因子の調節異常が病的な役割を担う可能性も明らかになった。つまりCLLでは、EBFやAP-1結合部位でのメチル化プログラムの実行の低下を伴った、EGRやNFAT結合部位での異常な低メチル化プログラムの実行が、正常なB細胞のエピジェネティックプログラムを不安定にしているのである。