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前立腺がん:前立腺がん感受性の基礎となる遺伝子調節機構
Nature Genetics 48, 4 doi: 10.1038/ng.3523
ゲノムワイド関連研究(GWAS)で同定された座位を分子的特徴付けすることにより、複雑な形質や疾患の基礎となる重要な遺伝子や生物学的機構を明らかにできる。本論文では、前立腺がんリスク座位の基礎となる遺伝子調節機構についての詳細な特徴付けを可能にするハイスループットの方法を示す。我々は、295の前立腺がんに関するクロマチン免疫沈降と塩基配列決定の実験データを、602の前立腺腫瘍試料の遺伝子型および遺伝子発現データに統合して解析した。この解析から、アンドロゲン受容体(AR)-FOXA1とAR-HOXB13をはじめとする複合体(転写因子-転写因子-DNAの3者の複合体)の広範囲にわたる破壊や競合的結合機構など、リスク座位SNPが影響を及ぼす新しい遺伝子調節機構を明らかした。35のリスク座位で57の発現量的形質座位を同定し、それらを対立遺伝子特異的発現解析によって確認した。さらに、前立腺がん細胞株モデルを用いて、予測された調節性SNPと標的遺伝子について実証することに成功した。最後に、我々の統合解析はインタラクティブな視覚化ツールを介して利用可能であることを付け加える。この解析法は、ゲノム塩基配列の多様性が遺伝子調節機構を介して疾患の素因に影響を及ぼす仕組みを解明し、また、下流のバイオマーカーや創薬に関連する遺伝子を明らかにするのに役立つものである。