Analysis
DNA修復:ERCC2の体細胞変異は尿路上皮腫瘍ゲノムの特徴的なシグネチャーと関連がある
Nature Genetics 48, 6 doi: 10.1038/ng.3557
DNA修復経路の変更は腫瘍において高頻度に起こり、腫瘍ゲノムに特徴的な変異シグネチャーを生じさせうる。しかし、ヌクレオチド除去修復(NER)経路に生じた体細胞変異に伴う変異シグネチャーについては、まだ同定されていない。本論文では、尿路上皮がんで働く変異形成過程を詳細に調べた。このがんは、NERにおいて中心的な役割を果たす遺伝子ERCC2の変異が高頻度で認められる腫瘍の1つである。3つの独立した尿路上皮腫瘍コホートを対象に変異シグネチャーを解析し、多様な塩基変化を特徴とするある変異シグネチャーの活性(予測変異数)とERCC2の体細胞変異との間に強い関連が見られることを明らかにした。さらに、このシグネチャーの活性は、喫煙とも関連することが分かった。この関連はERCC2の変異の状態に無関係であり、尿路上皮がんにおいてタバコを原因として変異が形成されるゲノムレベルでの証拠となる。まとめると、今回の解析によって、NERに関連する変異シグネチャーが特定され、腫瘍ゲノムの変異全体に及ぼすDNA損傷とその後のDNA修復が果たす役割が明らかになった。