Analysis
がんタンパク質:ネットワークを用いたタンパク質活性推定により行うがんの体細胞変異の機能特性解析
Nature Genetics 48, 8 doi: 10.1038/ng.3593
調節異常を来した多数のがんタンパク質を各患者において同定し、それらが腫瘍形成に関与することを突き止めることは、個別化治療法を開発する上で不可欠である。しかし、生体試料に含まれる異常なタンパク質活性を誤りなく推定することは、依然として容易ではない。というのは、遺伝的変化から予測できるのはその一部分にすぎず、またタンパク質活性は、直接的な測定には通常向いていないからである。この問題に対処するため、遺伝子発現データからタンパク質活性を正確に推定する新しいアルゴリズム、VIPER(virtual inference of protein activity by enriched regulon analysis)を導入し、実験的にその有効性を検証した。VIPERを用いて、がんゲノムアトラス(TCGA)に含まれる全ての試料を対象に、調節タンパク質に見られる遺伝的変化と機能との関連を調べた。その結果、確立された変異が引き起こすタンパク質の異常活性を正しく推測できることが分かった。さらに、変異が存在しなくても活性が異常ながんタンパク質で創薬標的となりうるもの、あるいはその逆のものを一部の腫瘍で同定した。in vitroアッセイから、VIPERによる推定で得られたタンパク質活性が、標的阻害因子に対する感受性の予測において、変異検出解析よりも優れていることが確認された。