Article

スーパーエンハンサー:乳腺のSTAT5駆動型Wapスーパーエンハンサーに見られる階層構造

Nature Genetics 48, 8 doi: 10.1038/ng.3606

スーパーエンハンサーは、転写因子が密に結合し、活性型クロマチン修飾を極めて多く含むゲノム領域から構成される。スーパーエンハンサーの機能に関するデータが不足していることに鑑み、本論文では、乳腺におけるスーパーエンハンサーの役割について詳しく調べることにした。乳腺は、妊娠時に並外れた遺伝子調節動態を示す臓器である。乳腺における主要な転写制御因子であるSTAT5A、グルココルチコイド受容体、H3K27ac、MED1に対するChIP-seq解析を行い、440の乳腺特異的スーパーエンハンサーを同定した。このうちの半数は妊娠時に活性化される遺伝子と関連していた。そこで、Wapスーパーエンハンサーの特性を精査するために、その構成エンハンサーに含まれるSTAT5結合部位に変異を導入したマウスを作出した。構成エンハンサーの中では、最も遠位のエンハンサーが最大エンハンサー活性を示した。ところが、さまざまな組み合わせの変異を導入してエンハンサー活性を解析したところ、妊娠時に遺伝子発現を1,000倍誘導させるには、全てのエンハンサーが必要であることが判明した。また、近位エンハンサー内にあるSTAT5、NFIB、ELF5の結合部位を破壊すると、スーパーエンハンサー全体の機能が喪失した。今回得られたデータは全体として、エンハンサーが時間軸上、および機能上の階層構造を作っていることを示唆している。今回の乳腺特異的スーパーエンハンサーの同定およびWap座位の作用機序の検証により、ホルモン感知遺伝子の細胞種特異的発現の調節機構についての手掛かりを得ることができた。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度