Analysis
発がんの性差:X染色体不活性化を免れたがん抑制遺伝子ががんの性差に関わっている
Nature Genetics 49, 1 doi: 10.1038/ng.3726
多くのがん種にわたって男性の発生率が優位であるという、理由が分からないが顕著な特徴が見られる。X染色体遺伝子のある一群がX染色体不活性化を免れることがあり、これは、単一の変異が機能を完全に喪失させることから女性を守るように働く。想定される「X染色体不活性化を免れるがん抑制遺伝子(EXITS genes:escape from X-inactivation tumor-suppressor genes)群を見つけるため、21の腫瘍タイプの4100例を超えるがんについて体細胞変異の性差の有無について調べた。非偽常染色体領域(PAR)のX染色体遺伝子783個のうち6個(ATRX、CNKSR2、DDX3X、KDM5C、KDM6A、MAGEC3)が、機能喪失型変異を男性でより多く起こしていた(偽発見率 < 0.1)。これに対し、常染色体およびPAR領域の1万8055個の遺伝子では0個であった(Fisherの正確確率検定 P < 0.0001)。X染色体不活性化を免れた遺伝子の男性に偏した変異は多くのがんについての総合的解析や、いくつかの個別のがん種で認められ、一般的な現象と考えられる。本研究から、女性でのEXITS遺伝子の両対立遺伝子の発現は、いろいろなタイプの腫瘍にわたって男性より女性でがん発生率が低いことの一端を説明しているものと考える。