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体脂肪分布:異所性脂肪沈着についての多民族ゲノムワイドメタ解析から脂肪細胞の形成と分化に関連する座位を同定する
Nature Genetics 49, 1 doi: 10.1038/ng.3738
体脂肪分布の異常は、肥満に続発する代謝疾患の一因となる。体脂肪分布の遺伝的決定因子については、ほとんど明らかになっていない。本研究の目的は体脂肪分布の遺伝的基盤について新たな手掛かりを得ることであり、この目的に沿って、異所性脂肪に関連する6形質(以降、異所性脂肪形質と称する)について、標本サイズの重み付け済みの固定効果モデルによるゲノムワイド関連研究のメタ解析を行った。対象は、ヨーロッパ系、アフリカ系、ヒスパニック系、中国系の最大で女性9594人、男性8738人であり、性別による層化有り無しの条件下で解析した。その結果、異所性脂肪形質に関連する7つの新たな座位を同定した(ATXN1、UBE2E2、EBF1、RREB1、GSDMB、GRAMD3、ENSA、P < 5 × 10−8、偽陽性率 < 1%)。これらの遺伝子について機能解析を行ったところ、初代マウス脂肪前駆細胞においてAtxn1かUbe2e2のいずれかの機能を喪失させると、脂肪細胞の分化に異常が起こった。このことは、脂肪形成におけるATXN1およびUBE2E2の生理学的役割を示唆するものである。将来的には、これらの遺伝子が脂肪細胞の機能に影響する機序や、これらのわずかな変化が全身性代謝疾患にどのように関係するかを説明する機序の詳細な検討が必要となる。