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コムギ:量的遺伝学によって、パンコムギの穀粒収量の雑種強勢におけるエピスタシス効果の役割が浮き彫りになる
Nature Genetics 49, 12 doi: 10.1038/ng.3974
コムギ収量の増大は、増加する世界人口に供給される食糧を十分なものとするために重要な、世界的な取り組みの1つである。コムギの穀粒収量は、雑種が両親の平均値よりも優れた形質を示すという雑種強勢を活用することで、増大させられる可能性がある。本論文では、さまざまな両親系統間の交配から作出された雑種集団における、両親平均値雑種強勢(midparent heterosis)の遺伝的背景を検討するために、目的に合わせた量的遺伝学の考え方を提示する。今回はこの考え方を、冬コムギの大規模なデータセットに適用した。すなわち1604の雑種と当該両親の優良育成品種135を対象に、11種類の環境条件における穀粒収量を評価した。雑種の収量は両親平均よりも平均10%高かった。この結果は、ほぼ15年の育種選抜過程に相当し、従って雑種を利用したコムギ育種の大きな将来性をさらに裏付けるものである。新たに考案された量的遺伝学の考え方によって実現したゲノム規模の予測関連マッピングから、コムギにおける穀粒収量の雑種強勢では、優性効果はエピスタシス効果に比べて、それほど重要な役割を果たさないことが明らかになった。