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骨髄異形成症候群:骨髄異形成症候群におけるクローン進化のダイナミクス
Nature Genetics 49, 2 doi: 10.1038/ng.3742
一般に、低リスクの骨髄異形成症候群(MDS)は、高頻度に高リスクMDSへ、さらには二次性急性骨髄性白血病(sAML)へ進展する。本研究では、こうした病期進展に関与する体細胞変異の役割を明らかにするため、MDS患者699例の全エクソームおよび標的遺伝子のシークエンス(配列決定)を行い、クローン進化について詳細に検討した。そのうち122例については経時的な解析を行った。各病期において蓄積する変異のパターンについては、既存の結果を含めて総計2,250例のMDS患者を検討した。病期の進展に伴い、変異の数、その多様性、クローンのサイズは増加していた。このとき、変異は主要なクローンに高頻度に存在し、その主要クローンが既存クローンを排除する場合もあれば排除しない場合もあった。高リスクのMDSと比べてsAMLで高頻度に認められる変異(タイプ1変異)であるFLT3、PTPN11、WT1、IDH1、NPM1、IDH2、NRASの変異は、新しく獲得される傾向があり、sAMLへの早期の進行と生存期間の短縮に関連していた。低リスクのMDSと比べて高リスクMDSで有意に高頻度に認められる変異(タイプ2変異)であるTP53、GATA2、KRAS、RUNX1、STAG2、ASXL1、ZRSR2、TET2の変異は、sAMLへの進行や生存期間と関連するものの、タイプ1変異よりも関与は少なかった。以上のように、タイプ1変異とタイプ2変異は、病期進展の際にそれぞれ特徴的な役割を果たすため、疾患モニタリングにおいて有用である可能性が示唆される。