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多剤耐性結核:世界的に多様な結核菌系統のゲノム解析から多剤耐性の出現と拡大についての手掛かりが得られる
Nature Genetics 49, 3 doi: 10.1038/ng.3767
多剤耐性結核(MDR-TB)は、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)の薬剤耐性系統によって引き起こされ、世界的にますます深刻な問題になっている。本論文では、5大陸の5,310の結核菌分離株の全ゲノム塩基配列についてのデータセットを解析した。これらの分離株では、分離された地理的位置、遺伝的背景、薬剤耐性について大きな多様性が見られたが、薬剤耐性の出現パターンは世界的に保存されていた。我々は多剤耐性の出現前に生じることの多い、前兆となる変異群を突き止めた。特に、イソニアジドへの耐性を付与するp.Ser315ThrをコードするkatG変異は圧倒的で、全ての系統、地理的な地域、期間にわたって、リファンピシン耐性を付与する変異が生じる前に出現していた。従って、リファンピシン耐性のみのマーカーを含む分子診断は、pre-MDR系統を同定するには不十分と考えられる。特に、katG p.Ser315Thrなど、多剤耐性の出現前に生じる多型についての知識を分子診断に組み込むことにより、pre-MDR-TBの患者への標的治療が可能になり、MRD-TBへのさらなる進展を防ぐことができる可能性がある。