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精密医療:時空間的ゲノム構造を明らかにすることで神経膠芽腫のプレシジョン・オンコロジーに関する情報が得られる
Nature Genetics 49, 4 doi: 10.1038/ng.3806
がんのプレシジョン・メディシン(精密医療)では腫瘍のゲノム解析を行うが、これにより個人に的を絞った治療のための情報を得ることができる。ところがこの戦略は、腫瘍の時空間的不均一性から複雑なものとなっている。今回、神経膠芽腫(GBM)患者52人から得た127の検体を用いて、ゲノムプロファイルと発現プロファイルを解析した。これらの検体は、複数の領域もしくは長期観察により採取されたものである。バルク細胞および単一の細胞のデータを解析した結果、同じ腫瘍病変由来の検体ではゲノムシグネチャーと発現シグネチャーは共通していたが、離れて存在する多病巣腫瘍や長期観察による再発腫瘍由来の検体では、異なるクローン由来であることを見つけた。患者由来の神経膠腫細胞(PDC)に対して抗がん剤によるスクリーニングを行うと、治療反応性が遺伝学的類似性に関連すること、そしてPIK3CA変異を多く含む多病巣腫瘍は薬剤応答パターンが不均一であることが分かった。さらに、治療の効果を上げるには、「幹」に近い変異(truncal evnet)を標的とするほうが、一部の患者にだけに見つかる変異(private evnet)を標的とするよりも効果的であることを示した。今回の研究成果は、時空的に多様なバイオプシー標本の網羅的ゲノム解析を行うことで推定される腫瘍の進化過程から、GBM患者に対する標的治療介入の情報を得ることができることを証明した。