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ワタ:ワタの栽培化におけるサブゲノムの非対称選択とcis調節の分岐
Nature Genetics 49, 4 doi: 10.1038/ng.3807
比較集団ゲノム学は、作物の栽培化における遺伝学的な歴史を解き明かす優れた手段となる。リクチワタ(Gossypium hirsutum)は経済的に重要な作物であるが、人為選択の影響に関するゲノムワイドかつ進化学的理解は不足している。本論文では、352の野生種および栽培種ワタのアクセッション品種を対象にしたゲノム多様性地図について述べる。栽培化による一掃(sweep)を受けたゲノム領域として93の領域を同定し(Aサブゲノムの74 MbとDサブゲノムの104 Mb)、ゲノム関連解析により、綿繊維の質に関わる形質と関連する19の候補座位を同定した。そして、綿花の繊維が長いという方向性選択が起こるときには、栽培化の過程でサブゲノム間に非対称な選択が生じている証拠を示した。また、DNaseⅠ高感受性部位の網羅的解析および3Dゲノム構造の解析を行い、機能性バリアントと遺伝子転写とを関連づけ、栽培化がcis調節配列の分岐に及ぼす影響を明らかにした。本研究成果は、主要な農作物における遺伝子の構成、調節、適応についての新たな手掛かりを与えるものであり、また、ゲノムを利用したワタの品種改良のための豊かな情報源となるものである。