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単一細胞トランスクリプトーム:単一細胞トランスクリプトームのreference component analysisからヒト大腸腫瘍における細胞の不均一性が明らかになる
Nature Genetics 49, 5 doi: 10.1038/ng.3818
腫瘍内の不均一性は、がん治療の大きな障害であり、腫瘍塊のプロファイリングの重要な交絡因子である。私たちは、11人の患者の原発性大腸腫瘍と、対応する正常粘膜についての単一細胞RNA–seqを用いて、大腸腫瘍とその微小環境の転写の不均一性について偏りのない解析を行った。我々は、単一細胞トランスクリプトームをロバストにクラスタリングするために、クラスタリングの精度を大きく向上させるアルゴリズムであるRCA(reference component analysis:参照要素解析)を開発した。RCAを用いて、がん関連繊維芽細胞(CAF)の2つの異なるサブタイプを突き止めた。さらに、上皮–間葉転換(EMT)関連の遺伝子群が、腫瘍試料のCAF亜集団でのみ発現上昇していることが分かった。これまでに、腫瘍塊のトランスクリプトーム解析を基盤として同一のサブタイプに割り当てられていた大腸腫瘍に対して、単一細胞シグネチャーを用いることによって、その大腸腫瘍患者を異なる生存確率のサブグループに分けることができたことは重要であり、従って我々の手法は予後評価に有効であることが浮き彫りになった。総合的に我々の結果は、腫瘍とそれに対応する正常試料の単一細胞RNA–seqプロファイリングにより、偏りのない解析が可能になり、腫瘍内の異常な細胞状態の特徴を明らかにする類いまれな手段となることを示している。