Letter
腫瘍不均一性:髄芽腫の空間的な不均一性
Nature Genetics 49, 5 doi: 10.1038/ng.3838
1つの腫瘍の複数の離れた箇所から採取されたバイオプシー検体には、相互に異なる、転写マーカーおよび遺伝子マーカーが存在している。このような空間的な不均一性は、バイオマーカーを特定したり、腫瘍全体に対して有効性が期待される標的治療を開発したりする際の、大きな妨げとなっている。本論文では、患者35人について、腫瘍の複数箇所から採取したバイオプシー検体のトランスクリプトームおよびゲノムのプロファイルを調べ、その空間不均一性を解析した。その結果、髄芽腫(MB)では、採取箇所に関わらず同一の(すなわち、空間的に均一な)トランスクリプトームが認められたが、高悪性度膠芽腫(HGG)ではそうではなかった。MBでは、1か所の検体から腫瘍サブグループを的確に分類することが可能である。一方、標的治療の標的となるような遺伝子の体細胞変異については、MB、悪性神経膠腫、腎細胞がん(RCC)において高度に空間不均一性を示すことが明らかになった。そして、MBの1か所から得た検体をもとに、標的治療に使用可能と考えられる標的変異を導きだした場合、それが腫瘍全体にわたってクローンを形成していることはほとんどなかった。この事実は、1つの標的に対する単剤療法の有効性を疑問視させるものであった。そこで、MBの標的療法についての臨床試験を行うにはまず、標的となる変異が腫瘍の全ての領域にわたってユビキタスに存在することを確かめる必要があることが示唆された。