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エピジェネティクス:着床後マウス胚でのTET1の細胞系譜特異的機能
Nature Genetics 49, 7 doi: 10.1038/ng.3868
哺乳類のTET酵素群はDNAの脱メチル化を触媒する。TET酵素群は重要なエピジェネティックな調節因子として精力的に研究されているが、その生理学的役割や、胚着床後の機能的重複性がどの程度かについては、ほとんど分かっていない。本論文では、マウス胚の着床後初期において、TET1のパラログであるTet2およびTet3の発現が検出されないときに、TET1が他と重複しない役割を持つことを明らかにしたので報告する。TET1は胚盤葉上層と胚体外外胚葉において、分化プログラムを決定する多数の遺伝子を調節している。TET1は、胚盤葉上層細胞では、ヒドロキシメチル化を介して遺伝子のプロモーターを脱メチルして、テロメアの安定性を維持する。意外なことに、TET1はメチル化の変化には依存せずに、一部は転写抑制因子JMJD8をコードする遺伝子の調節を介して、胚盤葉上層の大部分の標的遺伝子を抑制することが分かった。TET1が存在しない場合には遺伝子発現の調節異常によって胚の異常が引き起こされ、これは近交系マウスでは部分的な浸透率しか持たないが、非近交系マウスでは完全致死をもたらした。総合的に我々の研究は、TET1の触媒活性と非触媒活性の間の相互作用が正常発生に不可欠であることを示すものである。