Letter

先天性心疾患:左心低形成症候群の複雑な遺伝的性質

Nature Genetics 49, 7 doi: 10.1038/ng.3870

先天性心疾患(CHD)は生児出生の最大1%に見られる。再発リスクが高いことから、遺伝的原因が示唆されるが、一方で、散発例が存在することからCHDの遺伝学は複雑であると考えられている。本論文では、重症CHDである左心低形成症候群(HLHS)が多遺伝子性であり、遺伝学的に不均一であることを示す。マウスの順遺伝学を用いて、我々の知る限り初めて、HLHSを示す変異体マウスを同定し、また、HLHSを引き起こす遺伝子群を突き止めたことを報告する。HLHSが見られる7系統のマウスの変異から、HLHSに連鎖する10カ所のヒト染色体領域に、変異を持つ多数の遺伝子が存在することが示された。これまでにCHDとの関連が示されていなかった遺伝子であるSap130およびPcdha9の変異は、マウスでのCRISPR–Cas9ゲノム編集によって、HLHSの2遺伝子性の原因であることが確認された。また、SAP130およびPCDHA13の変異を持つHLHSの患者1人も明らかになった。マウスおよびゼブラフィッシュでのモデルから、Sap130は左心室低形成に関与し、Pcdha9は大動脈弁異常の浸透率の上昇をもたらすことが示された。このどちらもHLHSの特徴的な異常である。これらの知見から、HLHSが遺伝学的な組み合わせの様式で生じうることが示されたので、CHDの複雑な遺伝学的性質の新しいパラダイムが示された。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度