GWAS:転写因子の結合が多因子疾患のリスクに及ぼす方向性のある効果をゲノムワイドに検出
Nature Genetics 50, 10 doi: 10.1038/s41588-018-0196-7
ゲノムワイド関連解析のデータを生物学的に解釈するに当たっては、SNPにひも付けられた生物学的プロセスのエンリッチメント解析を行うことがしばしば必要になる。その際、例えば転写因子の結合が疾患シグナルと結び付いているかどうかは、効果の符号と無関係に評価する。しかし、各SNP対立遺伝子がその生物学的プロセスを促進するか抑制するかを数値化する符号付きアノテーションを行えば、疾患の機序をより明確に述べることが可能となる。本研究では、疾患リスクに対する方向性のある効果をゲノムワイドに検出するための符号付き機能アノテーションを行う手法として、「符号付き連鎖不平衡プロファイル回帰法(signed linkage disequilibrium profile regression)」を開発した。本手法をシミュレーションによって検証し、さらに血中分子に関する量的形質座位に適用することで既知の転写調節因子の関与を確認した。本手法を、Genotype-Tissue Expressionコンソーシアムの48の組織の発現量的形質座位に適用したところ、転写因子と組織間の関連が651同定され、そのうち30は組織特異性の確かな証拠を有していた。また、46の疾患ないし複雑形質(平均でn = 29万)に本手法を適用したところ、アノテーション–形質間の関連が77同定され、それらは転写因子–形質間の独立した12の関連に由来していた。また、それぞれの関連について、関与している転写プログラムの詳細を遺伝子セットエンリッチメント解析により明らかにした。本研究で得られた知見は、新規の疾患原因遺伝子ならびに新しい疾患機序を示唆している。