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転写:一分子レベルの新生RNA塩基配列決定によりプロモーターおよびエンハンサーでの調節ドメイン構造が明らかになる
Nature Genetics 50, 11 doi: 10.1038/s41588-018-0234-5
真核生物のRNAポリメラーゼII(Pol II)はプロモーターと遠位エンハンサーの両方で見られることから、mRNA産生以外にも機能があると考えられている。本論文では、この役割を理解するために、一分子レベルの分解能で新生RNAの塩基配列決定を行い、Pol IIによる転写の開始、キャップ形成、およびPol II停止の間の相互作用をゲノム規模で明らかにした。我々の解析から、停止には2種類あり、異なるRNAのキャップ形成プロファイルに関連していることが明らかになった。近位での停止は、後期の停止に比べて、不完全なキャップ形成、伸長の低下、およびエンハンサーに類似した転写因子の補充により大きく関連していた。意外なことに、転写開始部位(TSS)は主に外側に転写が進む(divergent)ペアが多数存在する領域に見られた。TSSクラスターは、ヌクレオソームの正確な配置に密接に関連しており、また、プロモーターやエンハンサーでの転写因子結合やクロマチン修飾の境界に対応していた。熱ショックにより転写の劇的な変化が誘導されるが、このときTSSの構造にはほとんど変化が見られなかった。総合的に我々の結果から、プロモーターやエンハンサーに結合するPol IIは、TSS集合体全体の情報を統合するための調節の中心であることが示唆された。