Perspective

ミトコンドリア疾患:ミトコンドリアの遺伝医学

Nature Genetics 50, 12 doi: 10.1038/s41588-018-0264-z

遺伝性のミトコンドリアDNA(mtDNA)疾患は30年前に発見され、その究明は一般的な代謝疾患や神経変性疾患、がんおよび老化の原因に関する新たな視点を提供してきた。母性遺伝するmtDNAは1細胞あたり何百コピーも存在し、37個の重要な生体エネルギー関連遺伝子を含んでいるが、「ミトコンドリアのゲノム」にはそれに加えて核DNA(nDNA)に含まれるミトコンドリアの遺伝子が1000~2000個も存在する。これらの2つに分かれているミトコンドリアの遺伝システムの相互作用が、一般的な複雑疾患の非メンデル型遺伝様式、加齢関連疾患のリスクと進行、浸透率と表現度の多様性、遺伝子と環境の相互作用といった現象の説明に寄与し得る。mtDNAの遺伝学は、メンデル遺伝学では説明できないヒト遺伝学の定量的要素と環境的要素を説明し得るのである。mtDNAは母性遺伝し、細胞質に存在するため、最初の生殖細胞系列遺伝子治療としての核移植が開発されている。だが、ミトコンドリア機能障害をすでに発症した患者に対する有効な治療法には、いまだ十分なものが存在していない。

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