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シロイヌナズナ:シロイヌナズナでは父系のeasiRNAが親から受け継ぐべきゲノム量を規定する
Nature Genetics 50, 2 doi: 10.1038/s41588-017-0033-4
親から受け継ぐゲノム量を規定することは、X染色体の不活性化や遺伝子量補償の例からも分かるように、動植物において極めて重要である。植物における「三倍体ブロック」はゲノム量の規定の例として古くから知られており、染色体数の異なる種間における生殖障壁を確立している。この生殖障壁は胚に栄養を与える胚乳組織で作用し、雑種種子の不稔を引き起こすが、その機構は未解明である。本論文で我々は、シロイヌナズナArabidopsis thalianaにおいて、父系のeasiRNA(エピジェネティックに活性化された低分子干渉RNA)の減少により三倍体ブロックが回避され、父系ゲノムの倍数性の増加がもたらされることを示す。父植物において植物特異的RNAポリメラーゼIVが欠失していると、easiRNAの合成が抑制されて不稔になることなく三倍体種子が形成されたが、これは転位性遺伝因子(TE)の低分子RNA依存的DNAメチル化の減少が抑えられた結果であり、父性発現を示すインプリンティング遺伝子(PEG)の発現の減少と相関性があった。我々のデータは、easiRNAが父系染色体の数量を示すシグナルを形成し、easiRNAの量的バランスが適正であることが受精後のゲノムの安定性と種子生存に必要であることを示唆している。