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CRISPR–Cas9:CRISPR–Cas9によるハイスループットなゲノムバリアント作製技術
Nature Genetics 50, 4 doi: 10.1038/s41588-018-0087-y
DNA塩基配列バリアントが機能にどのように影響するかを理解することは、基礎生物学、進化学、遺伝医学の研究を行うにあたって極めて重要である。しかし、これらの影響を高効率に評価するのはなかなかの難題である。有望な解決法の1つは、CRISPR–Cas9系による正確なゲノム編集の利用である。この技術によって、ガイドRNA(gRNA)の標的配列に対応するゲノム部位にDNA二本鎖切断(DSB)を生じさせることができる。CRISPRによって導入された切断に対する非相同末端結合(NHEJ)による修復エラーを利用することで、フレームシフト変異を作製することができるが、最近の研究では、こうしたフレームシフト変異をゲノム規模で多数作り出すために、CRISPRライブラリーが用いられている。今回、CRISPRライブラリーを利用して、高効率かつ正確な、ゲノム規模のバリアント作製技術を開発した。本法を用いて、酵母の機能注釈済み全必須遺伝子内のさまざまな場所に生じた中途終止コドン(PTC)について、それが引き起こす機能への影響を検討した。その結果、PTCが遺伝子の3'末端近傍に生じて、機能注釈済みタンパク質ドメインに影響しない場合を除き、PTCのほとんどが極めて有害であることが判明した。さらに、予想と異なり、必須であると考えられていた遺伝子が必須ではなかったり、あるいは、必須でない大領域を保有していたりすることが明らかになった。本法は、多くの種類のバリアントの効果をハイスループットで特性解析するために利用できる。