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非コード配列:非コード変異を腫瘍遺伝子の発現変化に結び付ける大域的転写ネットワーク
Nature Genetics 50, 4 doi: 10.1038/s41588-018-0091-2
がんゲノムには膨大な数の非コード変異が認められるが、そうした変異がどのような効果を持つかについてはあまり解明が進んでいない。本研究では、930例の腫瘍の全ゲノム、およびそれと対応するトランスクリプトームの統合的な解析を実施し、その変異が標的遺伝子の発現レベルを変化させる193の非コード座位のネットワークを明らかにした。これらの「体細胞eQTL(発現量的形質座位)」は、それぞれ特定のがん組織で変異の頻度が高く、またその大部分は3382例の腫瘍を含む独立したコホートでも確認することができた。これらのうち、DAAM1、MTG2、HYIの転写に対する非コード変異の影響を、複数のがん細胞株において確認した。また、DAAM1の発現レベルの上昇は、浸潤性の細胞遊走をもたらすことが分かった。これらの非コード座位は全体としていくつかの主要経路を構成しており、これによって腫瘍を、経路に基づいたサブタイプに分類することが可能になる。体細胞eQTLのネットワークには腫瘍の88%で異常が見られており、がんにおける非コード変異の広範な影響が示唆される。