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クロマチン構造予測:高分子物理学により構造バリアントがクロマチン構造に及ぼす影響を予測する
Nature Genetics 50, 5 doi: 10.1038/s41588-018-0098-8
構造バリアント(SV)は、クロマチンの異常な折りたたみによる遺伝子発現の変化を引き起こすことがあり、疾患の原因となり得る。しかし、その影響を予測することは簡単ではない。本研究では、高分子物理学を基盤とする手法(PRISMR)により、クロマチンの3Dでの折りたたみをモデル化し、エンハンサーとプロモーターの接触を予測したので報告する。PRISMRは、ゲノムワイドな染色体コンホメーション捕捉法(Hi-C)によるデータから高次のクロマチン構造を予測する方法である。EPHA4座位をモデルとして用いて、病因となるSVの影響をin silicoで予測し、マウス肢芽と患者由来の繊維芽細胞から得られたHi-Cデータと比較した。PRISMRによりEPHA4座位の複雑な折りたたみが解き明かされ、SVに誘導される異所的接触および3Dゲノム構成の変化をホモ接合性状態もしくはヘテロ接合性状態の両方において突き止めることができた。SVはトポロジカル関連ドメイン(TAD)を再構成できることから、調節性相互作用の配線が大規模に変化し、遺伝子の誤発現によって疾患が引き起こされることが分かった。PRISMRは、相互作用の予測をin silicoで行えるので、SVが疾患を引き起こす可能性を解析するためのツールとなる。