Analysis
がん転移:転移性がんの最大節約的移動履歴の推定
Nature Genetics 50, 5 doi: 10.1038/s41588-018-0106-z
転移とは、原発腫瘍から他の解剖学的部位へのがん細胞の移動である。長い間、転移はモノクローナルな播種、すなわち単一の細胞の移動によるものと考えられていたが、転移性がんの最近の系統解析からは、部位間の細胞移動における複雑なパターンが報告されており、ポリクローナルな移動や再播種が見られることが分かっている。しかしながら、体細胞変異のデータから移動パターンを正確に決定することは、腫瘍内不均一性、およびクローン系統と細胞移動の間に見られる不一致の存在のため、容易ではない。今回我々は、転移性がんのクローン系統と最大節約的移動履歴をDNA塩基配列データから合わせて推定する、多目的最適化アルゴリズムMACHINAについて報告する。複数のがんのデータをMACHINAにより解析した結果、移動パターンは塩基配列データだけでは一意的に決定できないことが多く、また原発腫瘍と転移巣の間に複雑な移動パターンが見られる例はこれまでに報告されているほど多くはない可能性があることが明らかになった。また、移動履歴をMACHINAにより厳密に解析することは、転移ドライバーの研究に役立つと考えられる。