Analysis
遺伝率:全ゲノムデータを用いて複合形質の遺伝率や遺伝的構造を推定する方法を比較する
Nature Genetics 50, 5 doi: 10.1038/s41588-018-0108-x
狭義の遺伝率h2を推定するために、血縁関係のない人の一塩基多型(SNP)を用いる方法が多数開発されている。しかし、これらの方法の包括的な評価はこれまで行われておらず、論文の混乱や矛盾につながっている。本論文では、これらの方法についてのこれまでで最も徹底的かつ実際的な比較を示す。何千もの全ゲノムを実際に配列決定したデータを用いて、遺伝的構造や交絡変数を変化させて表現型をシミュレートした。また、SNPアレイ、インピュテーションにより導かれたSNP、そして全ゲノム塩基配列決定法で同定されたSNPを用いて、「SNP遺伝率」の推定値を得た。SNP遺伝率は、基盤とする原因バリアントの頻度、効果量、連鎖不平衡のレベルをどう仮定するかに大きく影響されるが、マイナー対立遺伝子頻度や連鎖不平衡に従ってSNPのビニング(分割)を行う方法については、遺伝的構造や可能性のある交絡因子が広範囲にわたっていても、これらの仮定の影響をあまり受けないことが分かった。これらの知見から、公表されている推定値のうち最もよい推定あるいは解釈はどれかを判断するための手引きが示された。