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がん精密医療:大規模並列配列決定によるタンパク質バリアント存在量に対する複数同時評価
Nature Genetics 50, 6 doi: 10.1038/s41588-018-0122-z
遺伝的バリアントがどのような疾患の発症要因であるかを決定することは重要な課題であり、多くの場合、機能的評価がその唯一の選択肢となる。何千もの臨床上重要な遺伝子が持ち得る何百万ものミスセンスバリアントを実験的に特性解析するには、一般化あるいは高速化が可能な分析システムが必須である。本論文では、VAMP-seq(variant abundance by massively parallel sequencing;大規模並列配列決定によるバリアント存在量決定法)について述べる。本法は、数千のミスセンスバリアントタンパク質について、細胞内存在量の効果を同時に評価するものである。今回PTENおよびTPMTタンパク質に含まれる単一アミノ酸バリアント7801個についてVAMP-seqを行い、その存在量を求めた。PTENやTPMTの機能的バリアントは、治療標的となり得るアクショナブル変異体である。その結果、タンパク質存在量が少なくなるバリアントとして、1138個のPTENバリアントと777個のTPMTバリアントを突き止め、前者ががんの発症原因となり得ること、後者が薬剤代謝を変化させ得ることを明らかにした。さらに、がんでは存在量の少ないPTENバリアントが選択されることを観察するとともに、メラノーマにおけるPTENバリアントの約10%を占めるp.Pro38Serが、ドミナントネガティブ効果を介して機能していることを示した。最後に、VAMP-seqが上記以外の遺伝子にも適用可能であることを明らかにし、この方法の一般化の可能性を示した。