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がんの進化:がんにおけるサブクローン選択をバルク塩基配列決定データから定量化する

Nature Genetics 50, 6 doi: 10.1038/s41588-018-0128-6

がんはその種類にかかわらず、一般的に複数の異なるサブクローンから構成されている。しかし、腫瘍サブクローンを生じさせる経時的な進化の動態はよく分かっていない。本論文では、コンピューターによるサブクローン選択のモデリングおよび理論集団遺伝学をハイスループット塩基配列決定データに適用することで、ヒトのがんにおけるクローン動態を評価する。本法を用いて、腫瘍標本が呈する検出可能なサブクローン構成を明らかにし、同時に各サブクローンの選択優位性や出現時期を求めた。さらに、本法の精度を示すとともに、進化の動態がゲノムに記録されている程度を明らかにした。具体的には、乳線、胃、血液、大腸、および肺のがん組織試料と転移病巣試料から得た高深度塩基配列決定データに本法を適用し、検出可能なサブクローン選択が、それが存在する場合には、腫瘍成長の初期に絶えず出現し、適応という点で大きな有利性(> 20%)を有することを示した。今回提示した定量化の仕組みは、広く入手可能な塩基配列決定データを基に、ヒトのがんが進化する経過について新たな手掛かりを与えるものであり、個々の腫瘍におけるクローン動態の予測的な計測を支援するものである。

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