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エンハンサー:転写因子Grainy headがヌクレオソームを移動させることで時空間的に上皮エンハンサーを活性化する準備を行う

Nature Genetics 50, 7 doi: 10.1038/s41588-018-0140-x

転写エンハンサーは、いろいろな転写因子(TF)の組み合わせを結合させるプラットフォームとして機能することで、遺伝子発現を制御している。エンハンサー配列が、in vivoで、ヌクレオソームの占有、TFの誘導、および転写活性化をどのように決定するのか、その仕組みは明らかになっていない。本論文では、ショウジョウバエ(Drosophila)の近交系のパネルにおけるATAC–seqを用いて、TFであるGrainy head(Grh)の結合部位に影響を及ぼすSNPが上皮エンハンサーの接近性を決定する原因となることを明らかにした。Grhの欠失によりDNA接近性の喪失が引き起こされ、Grhの異所性発現によりDNA接近性の獲得が引き起こされることが分かった。しかし、Grhの結合はエンハンサーの接近性に必要であるが、エンハンサーの活性化には不十分であった。また、ヒトのGrhホモログであるGRHL1、GRHL2、GRHL3も同様に機能することが分かった。我々は、Grhの結合が上皮エンハンサーのクロマチン開放(オープンにする)に必要かつ十分であるが、エンハンサーの活性化は行わないと結論する。今回のデータから、遺伝子発現の複雑な時空間的パターンは、調節性の階層構造による制御を受けると仮定するモデル、すなわち、まずGrhなどのパイオニア因子群が接近可能なクロマチンの空間的配置を組織特異的に確立し、それにより他の因子が機能できるようになるというモデルの正しさが裏付けられた。

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