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クロマチン:ヒトの活性化T細胞における共接近可能なクロマチン領域の遺伝的決定要因
Nature Genetics 50, 8 doi: 10.1038/s41588-018-0156-2
ヒトの複雑形質に関連する遺伝的バリアントの90%以上は非コード領域にマッピングされるが、それらのバリアントが健康や病気において遺伝子発現を調整する仕組みについてはほとんど分かっていない。1つの可能性として、特定のタイプの細胞において、遺伝的バリアントが1つ以上のシス調節配列の活性に影響を及ぼし、それにより遺伝子発現の差異がもたらされるという機構が考えられる。本論文では、そのようなケースを特定するために、最大105人の健康なドナーから刺激した初代CD4+ T細胞を得て、それについてATAC-seqとRNA-seqを行い、そのプロファイルを解析した。接近可能なクロマチンの領域(ATACピーク)は、キロベースまたはメガベースの分解能で共接近可能であり、これは、T細胞においてin situ Hi-Cによって測定される三次元クロマチン構造の場合と一致した。ATACピーク内に位置する遺伝的バリアントの15%は、対応するピーク(local-ATAC-QTL)の接近可能性に影響を及ぼした。local-ATAC-QTLは、共接近可能なピークに最も大きな影響を及ぼしており、遺伝子発現と関連を示し、また自己免疫疾患のバリアントで豊富に見られた。我々の結果は、天然の遺伝的バリアントがシス調節配列を調整し、単独あるいは協調的に働いて遺伝子発現に影響を及ぼす仕組みを解き明かす手掛かりとなるものである。