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クロマチン:開いたクロマチン領域間に生じ得る因果関係のある相互作用の高精度遺伝マッピング
Nature Genetics 51, 1 doi: 10.1038/s41588-018-0278-6
三次元空間における調節配列同士の物理的な相互作用は、非コード領域に存在するリスクバリアントがその調節対象である遺伝子から非常に離れたところに存在することがあるため、疾患研究にとって難しい課題となっている。このような調節配列の物理的相互作用を捉える実験手法である3C法(chromosome conformation capture)といった方法は、通常、調節配列間での効果の因果関係を明らかにすることはできず、そのため高精度マッピングを行うことができない。今回、二段階最小二乗法を用いるベイズ階層モデルを考案し、このモデルを100人の患者由来のATAC-seq(assay for transposase-accessible chromatin using sequencing)データセットに適用することで、1万5000を超える信頼度の高い因果関係を同定できた。大半(60%)の相互作用は、3C法から派生した手法では正しく解析できない20 kb以下の距離で起こっていた。また、一部の座位では、複数の領域への接近性がただ1つのバリアントによって変わってしまうことがあることが分かった。そして、多数の自己免疫疾患との関連を示すBLK領域がこのような例であることをCRISPRゲノム編集によって実験的に確認した。今回の研究成果は、クロマチン状態の遺伝学的関連解析が、調節配列間の相互作用を同定する上で、いかに強力な手法であるかを明らかにするものである。