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幹細胞:多能性幹細胞のナイーブ型からプライム型への転換期に、クロマチンはニューロンのプロトカドヘリン選択の未成熟状態を確立する
Nature Genetics 51, 12 doi: 10.1038/s41588-019-0526-4
哺乳類ゲノムにおいて、クラスター型プロトカドヘリン(cPCDH)座位は、確率論的に遺伝子を発現させる仕組みを備えており、全てのニューロンにおいて固有のcPCDHの組み合わせを生成し得る潜在的能力を持つ。今回我々は、細胞の多能性がナイーブ状態からプライム状態へ移行する間に、クロマチンを基盤とする機構の働きにより、ヒトcPCDH座位中の組み合わせの可能性が桁違いに低下していることを報告する。この機構は、ニューロンの単層培養や10か月齢の皮質オルガノイド、ラット脊髄の移植細胞におけるニューロン分化後に、cPCDH遺伝子の小グループの選択頻度を確率論的に増加させる。このような特異的な頻度選択の形跡は、胎児の発達期間中を通して脳内に観察されうるが、成熟が遅延した状態であるダウン症候群などを除き、生後には失われる。この機構によって、ヒトニューロンが胎児様の成熟レベルにある間は、cPCDH遺伝子発現の多様性のパターンが制限された状態で維持されると考えられる。